【結果】 4月28日(土) 2012 J1リーグ戦 第8節 鹿島5-0G大阪(15:34/カシマ/17,583人) [得点者] 42' 遠藤康③(鹿島)←西大伍② 53' 興梠慎三④(鹿島)←新井場徹① 71' 大迫勇也①(鹿島)←ドゥトラ② 89' 本山雅志①(鹿島)←大迫勇也② 90'+3 大迫勇也②(鹿島)←遠藤康① [フォーメーション] FW:興梠、大迫 MF:ドゥトラ MF:小笠原、、遠藤 MF:柴崎 DF:イバ、山村、岩政、西 GK:曽ケ端 [選手交代] 66分:小笠原→青木 77分:ドゥトラ→本山、興梠→ジュニーニョ
【試合の感想】 似たもの同士の違い 固定メンバーだった昨季までと違ってスターティングメンバーが読めない今年の鹿島ですが、ジョルジーニョ監督がこの試合で選択したのは前節後半のメンバー、システムでした。 ドゥトラ、小笠原、遠藤、柴崎らが構成する中盤がダイヤモンド型の4-4-2という攻撃的な布陣ですね。 G大阪は中盤がボックス型の4-4-2、こちらも前節に快勝した清水戦と同じメンバーでした。 両クラブとも今季から新監督を迎えたのですが、3連敗スタートした後に引き分け、1つの敗戦を挟んで2連勝中とまったく同じ星取り表となっており、G大阪に監督交代はあったものの似たもの同士の対戦となりました。 しかし、試合内容には前半から差が見てとれましたね。 ファーストシュートは興梠、続いてドゥトラがドリブルからシュートを放つと、大迫も左サイドから仕掛けてゴールを狙います。 立ち上がりから前線の3人が積極的にドリブルで仕掛けていましたね。 そして前線からプレスをかけてボールを奪うと、鹿島の遠藤がG大阪のボランチ、サイドハーフの間の中途半端な位置でボールを受けて攻撃の起点になっていました。 両サイドバックの上がり、また大迫の流れる動きからサイドの高い位置までボールを運べていましたし、ここのところはそこからシンプルで意図のあるクロスが入っているので得点の可能性を感じさせます。 23分には遠藤のドリブルでの仕掛けからドゥトラに繋いで小笠原の決定機を迎えますが、これをゴールの上にはずしてしまいます。 しかし、鹿島はセットプレイを含めて攻撃がシュートで終わることが多かったですね。 一方G大阪はポゼッションをしてボールは回すものの、攻撃の形が作れていません。 昨季はイ・グノが高い位置で起点になっていたのですが、今季はそういう選手がいなかったですからね。 ラフィーニャはフィニッシャーとしての能力は高いですが、ポストプレイをしたりDFラインの裏を狙ったりと攻撃の起点になるようなタイプではないです。 それでも今季もこれまで毎試合得点をしていましたが、序盤は個の力によるものが多く、ここのところは佐藤が起点になれていましたからね。 しかし、鹿島はこの佐藤をしっかりケアして起点にさせませんでした。 そのため、G大阪は武井、ラフィーニャの苦し紛れのミドルシュートや遠藤のFKくらいでしかシュートまでは持って行けていませんでしたね。 ただ、30分くらいから流れがややG大阪に傾きます。 遠藤が右サイドの高い位置に顔を出すようになると、寺田、加地の3人でそこに起点を作られるようになります。 左サイドも同じように藤春が高い位置を取ることはあったのですが、こちらは遠藤と西がよく守っていました。 右サイドは小笠原、新井場、柴崎ともに中央を開けたくない、ドゥトラもあまり下がると今度は明神がフリーになって来るということでマークの受け渡し、プレスが出来ていませんでしたね。 そのため、タッチライン際に張る選手がフリーになってしまっていました。 単純にクロスを入れられるだけなら佐藤の高さがやややっかいだったものの、中央の岩政と山村を中心に跳ね返せていましたが、サイドの高い位置で起点を作られてそこからバイタルエリアを狙われると危ない場面をいくつか作られてしまいました。 その嫌な時間帯は体を張って守ると終了間際にチャンスを迎えます。 遠藤のサイドチェンジから新井場がドリブルで上がり、大迫にパス。 そこで大迫がボールをキープしたことでG大阪の選手が中央へ寄って行き、そこから右サイドへの展開によって西のマークに藤春が引き出されます。 そのため右サイドに大きなスペースが空いてそこを大迫が突き、ボールを受けると上手くキープして起点に、西がペナルティエリアに侵入する時間を作ってパスを出します。 そして、西からのパスを遠藤が左足一閃、ゴール左上に突き刺して先制します。 遠藤の3試合連続のゴールでリードして後半を迎えます。
ダイヤモンドの輝き 後半は鹿島のペースでずっと試合が進むわけですが、これはハーフタイムのジョルジーニョ監督の修正が大きかったです。 G大阪は前半と同じように右サイドで起点を作ろうとするのですが、後半の鹿島は新井場、小笠原のボールホルダーに近い方がしっかりプレスに行けていました。 また、G大阪の遠藤に対してはドゥトラではなく柴崎がアンカーから飛び出してケアしていましたし、小笠原、柴崎、遠藤のサイドへのシフトもスムーズになっていました。 これによってG大阪は完全に攻め手を失いましたね。 佐藤が起点になれず、前半唯一の望みだった頼みの右サイドからの攻めも封じられてしまったので、必然的に主導権は鹿島に移りG大阪は後手に回るシーンが多くなります。 鹿島は前半に比べて高い位置を取れるようになった新井場が完全にサイドの主導権を掌握、多くのチャンスを演出していましたね。 53分にはスローインのリスタートからドゥトラがドリブルで突進、G大阪の選手を3人引きつける絶妙なタイミングで左サイドを駆け上がった新井場にパスを出すと、そのセンタリングを興梠が上手くトラップしてニアサイドに決めます。 あの体勢からゴールの枠に飛ばせるのはやはり体にキレがある証拠で、興梠のコンディションの良さが窺えるゴールでした。 興梠の4試合連続ゴールで突き放すと、やはり観たいのは大迫のゴールですよね。 引き続き右サイドを中心にチャンスを作ると興梠の折り返しを大迫がシュートしますがDFに当たってバー直撃。 その後も興梠のヘッドもポストに当たるなどゴールへの期待感と運の悪さによる感情のアップダウンが目白押しです。 G大阪はポゼッションしても選手たちがどうゴールを奪えばいいか、そのための形を共通意識として持てていないので、鹿島にボールを取られてカウンターを受けるためにボールをポゼッションしているような状態でしたね。 その証拠に後半のシュートは途中出場のパウリーニョが苦し紛れに放ったロングシュート2本と武井のミドルシュートのみでした。 大迫のクロスにドゥトラのヘッド、ドゥトラのドリブルからのクロスが大迫に合わないなど決定機が続き、71分、待望の大迫のゴールが生まれます。 クリアボールを拾ったドゥトラがドリブルで突進、シュートコースがなかったのでギリギリで大迫に流します。 シュートはまたもやDFに当たりますが、それがGKのタイミングをはずしていい所に飛びましたね。 その後もドゥトラの推進力は留まることを知らず、バー直撃のシュートなどありますが、77分に本山とジュニーニョと交代となります。 ここからは上手くパスを回しながら相手を引き出して隙を作って突いていくという形になりましたね。 89分には遠藤が中央へドリブルで切り込むと大迫にパス、その落としを本山が決めてこちらも今シーズン初ゴールとなりました。 この得点シーンはジュニーニョが遠藤の外を回って追い抜くことで加地がそちらに釣られたので遠藤が中央へ切り込めましたね。 こういう動き直して外を追い抜くという動きはまだまだ少ないので見習ってほしいです。 さらにロスタイムには遠藤のフィードから大迫が決めてダメを押します。 藤ヶ谷はトラップしようとしたのか分かりませんが、角度的に右足で処理しづらかったので触れなかったんですかね。 大迫は1点を取るのに苦労していましたが、入るときはこんなものかもしれません。 連勝対決は鹿島が大勝で制す結果となりました。
ドリブルがもたらしたもの 昨季と今季でもっとも違うものと言えばドリブルの回数ですよね。 昨季はボールをもらった場所からテコでも動かないというようなサッカーでしたが、今季はドリブルでボールを運ぶことで縦への推進力が出ておもしろいサッカーになっています。 データで見ても明白ですが、昨季のドリブル回数は354でこれはリーグ15番目でした。 今季は6節終了時点で87、リーグで4番目の多さとなっています。 昨季は大迫、遠藤の2人がドリブル回数トップ2だったのですが、この2人は今季も序盤から積極的にドリブルで仕掛けていました。 特に遠藤は昨季に比べてポジションが中央寄りになったことで効果的なドリブルができ、起点になって来ていましたからね。 動き出しのタイミングも早くなって相手に詰められる前にスペースにボールを運べていますし、相手からすればかなりやっかいな存在になっています。 それに加えてドゥトラのドリブルがまたすごいですし、相変わらず大迫もいい仕掛けをしています。 その上興梠も今季は仕掛ける場面が多いですし、ジュニーニョもドリブルは得意ですからね。 また、中盤の選手の距離感が改善されたことでサイドバックもオーバーラップする回数が増えていますし、新井場、西になってドリブルからセンタリングという攻撃の形も脅威になっています。 この辺りはボックス型の時からよくなっていましたからね。 ダイヤモンド型になってさらにドリブル力には拍車がかかっていますが、ドリブルが増えたと言ってもいいタイミングで周りの選手を使えています。 ドゥトラもこの試合の前半は少し持ち過ぎてボールロストする場面もありましたが、京都時代と違って格段に球離れがいいです。 特に2点目の新井場へのパスは観ていて思わず上手いって叫んでしまいましたね。 何てことはないパスですがタイミングが絶妙でした。 ドリブルだけでなくフィジカルがあるのでボール奪取もよくしてくれますし、高さもあるので競り勝ってくれるのも大きいです。 昨季に比べてゴールに向かう意識が段違いですし、このドリブルの威力がさらに鹿島のパスサッカーを高めてくれると思います。
ダイヤモンドか、ボックスか 大阪勢との対戦でダイヤモンド型が機能したことで、これからはどちらのフォーメーションで戦うのかという話にもなると思いますが、こーめいはどちらも使っていけばいいと思います。 メリットがあれば必ずデメリットもあるわけですから、複数のフォーメーションを使えた方がいいですからね。 ダイヤモンド型はドゥトラがトップ下に入ったことも大きいですが、やはりアンカーに柴崎が起用されることで後方からのビルドアップが安定します。 後ろの選手が相手のプレスをかいくぐってボールを出せるので前線の選手が生きるわけですから。 また、今の鹿島には後ろでボールを持って何かできるサイドバックがおらず、高い位置を取れてなんぼなので、小笠原と遠藤が低い位置で起点になれることで新井場と西が上がりやすくなっているのも効いていますね。 カウンターについてもトップ下にボールを収められる選手がいれば起点ができますし、前線の選手間の距離もよくなっています。 攻撃的に行きたい時やスペースがあるときはダイヤモンド型の方がメリットは大きいでしょうね。 ただ、やはり守備に関してはバイタルエリアが危険にさらされる事が多く、ポストプレイの上手い選手、2列目から飛び出して行く選手が多いクラブとの対戦ではやられる場面も増えると思います。 でも、得点の取り合いで勝つというのも1つの選択肢ですし、それにドゥトラ、小笠原、遠藤と球際が強くてボール奪取が上手い選手が揃い、その後ろを柴崎がクレバーにフォローしているので意外と守備力の高さが目立ちます。 この試合の後半は上手く組織で守れていましたし、これからもっと良くなる可能性はあるので期待したいですね。 後はそれぞれのポジションを出来る選手が少ないっていうのが問題です。 トップ下は今のクオリティなら遠藤を入れてもいいかなとは思いますが、やはりドゥトラ以外では威力が落ちそうですし、アンカーも柴崎でないとプレスをかけられたらそこで詰まってしまうでしょうね。 本田が復帰すれば柴崎や遠藤をそれぞれ1つ上げることも可能かもしれません。 これもいろんな組み合わせで新しい輝きが出て来るかもしれないので楽しみではあります。 試合の主導権を握れれば間違いなく破壊力はとんでもないです。 ボックス型については改めて言うまでもないですよね。 C大阪戦など失点してはいましたが、機能すれば安定感はこちらの方が上です。 また、ダイヤモンド型ほど人を選ばないので汎用性は高いです。 分かりやすく「逆襲のシャア」で例えるならボックス型はジェガン、ダイヤモンド型はリ・ガズィといったところです。 対戦相手や試合状況によってダイヤモンドとボックスを使い分ける宝石箱方式(ジュエリーボックスシステム)で戦えば選手層も厚くなり、戦術も幅広くなると思います。
清水戦に向けて 清水はFC東京との対戦でフランサとアレックスが退場しました。 アレックスの欠場は大きいですが鹿島の苦手な枝村あたりが出て来そうですし、CFもボールのおさまる高原に出て来られた方がやっかいですね。 そこは2CBとアンカーで潰していかないといけないです。 清水の守備はアンカーの村松が縦横無尽に駆け回って危ないスペースを消して来ますし、両ウィングも割と下がって守備をするので昨年より堅いですね。 それでもバイタルエリアを目がけてドリブルでガンガン仕掛けていったら相手は混乱すると思います。 ただ、清水のサイドバックとアンカーははビルドアップ能力は高くはなく、小野に気をつけないといけないですが、攻撃は基本的にサイドから。 高木と大前は足元でもらって仕掛けたがる傾向があるのでサイドをきっちり守ってドリブルを警戒していたら守れると思います。 サイド攻撃の際はペナルティエリア内に3人くらいは入って来ますけど、特に気をつけないといけないのはDFラインの裏を狙ったアーリークロスですね。 いいボールが入って来ますし、サイドからウィングが絞ったり後ろから飛び込んでこられるとフリーにさせてしまいがちですから危ないですよ。 鹿島はどういうフォーメーション、メンバーでいくのでしょうね。 こーめいは清水相手ならダイヤモンド型がいいと思いますが、それだと連戦なのでローテーションを考えると山村→中田、興梠→ジュニーニョくらいしか動かせないような気がします。 そのままでいきそうな気もしますし、また予想を上回る大胆な起用をして来る可能性もありますが、現時点で予想してもアテにはならないので楽しみに試合を待ちたいと思います。
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テーマ:鹿島アントラーズ - ジャンル:スポーツ
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